高齢期こそ学びたい!スマホ・PC活用で広がる学習と社会参加の新しい世界:老年学が示す可能性
定年を迎えられ、これからの時間をどのように過ごそうかと考えている方も多いのではないでしょうか。趣味に時間をかけたり、旅行を楽しんだり、あるいは地域活動に参加したりと、様々な選択肢があるかと思います。しかし、中には「定年後の生活に少し物足りなさを感じている」「もっと新しい世界と繋がってみたいけれど、何をすれば良いか分からない」と感じている方もいらっしゃるかもしれません。
現代社会において、情報収集やコミュニケーション、そして学びや社会参加の機会は、デジタル技術によって大きく広がりを見せています。特にスマートフォンやパソコンといったデジタルデバイスを活用することは、高齢期の生活をより豊かにするための強力な手段となり得ます。
この記事では、高齢期におけるデジタル活用がなぜ重要なのかを老年学の視点から解説し、具体的な学習や社会参加の方法、そしてデジタル活用を始めるためのヒントについてご紹介します。
老年学から見た高齢期におけるデジタル活用の重要性
老年学では、高齢期の幸福度や生活の質(ウェルビーイング)を高める上で、社会との繋がりや知的な活動が非常に重要であると考えられています。デジタル活用は、まさにこれらの要素を強化するための有効なツールなのです。
1. 脳機能の維持・活性化
新しいスキルを習得することは、脳に新たな刺激を与え、認知機能の維持や向上に繋がることが多くの研究で示唆されています。スマートフォンやパソコンの操作を学ぶこと自体が、新しい知識や技術の習得であり、脳の活性化に貢献します。オンラインでの情報検索、文章作成、写真の編集なども、複雑な思考プロセスを伴うため、脳を活性化させる活動と言えます。
2. 社会的な繋がりの維持・拡大
高齢期における社会的な孤立は、心身の健康に悪影響を及ぼす要因の一つです。デジタル技術は、地理的な制約を超えて人々と繋がることを可能にします。電子メールやメッセージアプリを使えば、遠く離れた家族や友人と手軽に連絡を取り合えます。SNSを活用すれば、共通の趣味を持つ人々と繋がったり、地域コミュニティの情報に参加したりすることも可能です。このようなデジタルを通じたコミュニケーションは、孤立を防ぎ、精神的な満足感を高める上で重要な役割を果たします。
3. 学習機会へのアクセスの容易化
デジタルデバイスとインターネット環境があれば、自宅にいながらにして様々な学習機会にアクセスできます。大学の公開講座をオンラインで受講したり、趣味や実用スキルに関する動画を視聴したり、興味のある分野の電子書籍を読んだりすることが可能です。時間や場所を選ばずに学べることは、高齢期の学習意欲をサポートする上で大きなメリットとなります。
4. 生活の質の向上
デジタル活用は、日々の生活をより便利で豊かなものにします。オンラインショッピングや行政手続き、交通情報の検索など、様々なサービスを自宅から利用できます。また、趣味に関する情報を調べたり、エンターテイメントを楽しんだりすることも容易になります。これらの利便性は、生活の自立性を高め、より活動的な毎日を送ることを支援します。
デジタル活用による具体的な学習の形
それでは、具体的にどのような形でデジタルを活用した学習に取り組めるのでしょうか。いくつか例を挙げます。
- オンライン講座・MOOCs(大規模公開オンライン講座): 国内外の大学や機関が提供する専門的な講座をインターネット上で受講できます。歴史、文学、科学、ビジネスなど、多様な分野の講座があり、多くは無料で提供されています。
- 動画共有サイト(YouTubeなど): 趣味(料理、園芸、DIYなど)や、健康・フィットネス、特定のスキルの習得(楽器、絵画など)に関する実践的な情報を動画で学ぶことができます。
- 電子書籍・オンライン図書館: タブレットやスマートフォンで手軽に読書を楽しめます。図書館のオンラインサービスを利用すれば、自宅から電子書籍を借りることも可能です。
- 語学学習アプリ・脳トレアプリ: スマートフォン向けのアプリを利用して、移動中や隙間時間に手軽に語学を学んだり、脳のトレーニングを行ったりできます。
デジタル活用による具体的な社会参加の形
デジタル技術は、社会との関わり方にも新たな選択肢をもたらします。
- SNSでの情報発信・交流: FacebookやTwitterなどのSNSで、日々の出来事や趣味の活動について発信したり、共通の関心を持つ人々とコメントやメッセージで交流したりできます。昔の友人や同僚と再び繋がるきっかけにもなります。
- オンラインコミュニティ・サークル: 特定の趣味や関心を持つ人々が集まるオンライン上のコミュニティやサークルに参加できます。写真、俳句、歴史研究など、様々なテーマのグループがあり、情報交換や作品発表などを通じて交流を深めることができます。
- 地域の情報収集・活用: インターネットで地域のイベント情報、市民講座、ボランティア募集などを簡単に検索できます。地域のWebサイトやSNSグループに参加することで、地域社会との繋がりを持つことができます。
- オンラインでのボランティア活動: 文章作成、翻訳、Webサイトの管理など、オンラインで参加できるボランティア活動もあります。自宅にいながら社会貢献することが可能です。
デジタル活用を始めるためのヒント
「デジタルは難しそう」「自分には無理だ」と感じている方もいらっしゃるかもしれません。しかし、最初から全てを完璧に使いこなす必要はありません。まずは小さな一歩から踏み出してみましょう。
- 目的を明確にする: 「孫とビデオ通話をしたい」「地域の情報を知りたい」「興味のある分野のオンライン講座を受けてみたい」など、具体的な目的を持つと、学習のモチベーションに繋がります。
- 簡単なことから始める: スマートフォンの基本操作(電話のかけ方、メッセージの送り方)や、インターネットでの簡単な検索(天気予報、ニュースを見るなど)から始めてみましょう。
- 学びの場を探す: 自治体や地域の公民館では、高齢者向けのスマートフォン・パソコン講座を開催していることがあります。家電量販店や携帯電話ショップでも、操作方法のサポートを受けられる場合があります。また、家族や友人に教えてもらうのも良い方法です。
- 無理せず、楽しむ: 一度に全てを覚えようとせず、自分のペースで進めましょう。分からないことがあっても落ち込まず、繰り返し練習することが大切です。自分が楽しいと思えることから取り組むのが継続の秘訣です。
まとめ
高齢期におけるスマートフォンやパソコンといったデジタル技術の活用は、単なる便利さだけでなく、老年学の観点からも、脳機能の維持・活性化、社会的な孤立の防止、そして新たな学習や社会参加の機会の獲得といった、人生を豊かにするための重要な要素に繋がります。
「もう年だから」とためらう必要はありません。知的好奇心があれば、年齢に関係なく新しいことを学ぶことは可能です。デジタル活用の世界は広大で、あなたの関心や目的に合わせた様々な可能性が広がっています。まずは小さな一歩を踏み出し、デジタルがもたらす新しい学びと社会参加の世界を体験してみてはいかがでしょうか。きっと、あなたのセカンドライフをより輝きのあるものにしてくれるはずです。